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第1話から読みたい方は、こちら（今日子さんシリーズ目次）へどうぞ！
スパルタデイケアでのリハビリや、今日子さんとの自主訓練の効果が徐々に見え始めた10月。
私は家の中では歩行器を卒業して、杖で歩けるようになっていました。
ふくらはぎなんか、うっすら筋肉がついてきて、自分でも「骨折前より見違えたんじゃない」なんて、1人でふくらはぎを見ながら満足感に浸っていたとき…
玄関のチャイムが鳴りました。
「こんにちはー。シニアコーポレーションです。自動運転車椅子の点検に来ました！」
モニターにはスーツを着た若い男性が映っていました。
「点検なんて聞いてないけどなぁ…」
今日子さんがタブレットを私に差し出します。
ケアマネジャーのAIアバター田中さんに相談できる「AIチャット機能」を使え…と今日子さんは言いたいのでしょう。
今日子さんのただならぬ雰囲気を感じて、私はすぐさま、「AIチャット機能」の音声モードを使って「今日、自動運転車椅子の点検の日ですか？シニアコーポレーションの方が来られてるんですけど」と訊ねてみました。
すると「詐欺です！出ないで！」とチャットの回答が…。
慌てる私に今日子さんが「ゆりこさん、おいはらいましょう」と言いました。
インターホンで「うちの自動運転車椅子は…えっと…フューチャーにお願いしていて…」と私がしどろもどろに応答していると、後ろから「ばぁちゃん、こいつ詐欺じゃねえか！」と孫の遊心の大きな声が聞こえてきたのです。
「えっ、遊心の声！？」
今日子さんがインターホンに聞こえるように、遊心の声を使って叫んでくれたようでした。
モニター越しに若い男性が不服そうな顔をして、帰っていく姿がありました。
「今日子さん、そんなこともできるの？」と私が驚いていると、「ひじょうじたいにそなえて、ゆうしんのデータをほぞんしていました。ゆうしんは『おれのデータたけぇーよ』とわらいながら、きょかしてくれました」と今日子さん。
「す、すごい…」
私が今日子さんを尊敬の眼差しで見つめていると「ゆりこさん、じぶんのみはじぶんでまもらないといけませんよ」
今日子さんに怒られてしまいました…
いまだに高齢者詐欺は後を絶ちません。
「点検」って言われると、ついついドアを開けてしまいそうになります。
「さぁ、AIにかんしんしているばあいじゃないです。きょうからあたらしいことをはじめます。にんげんもまけてはいられないでしょう」
今日子さんが隣の部屋から、段ボールに入った真新しいパソコンを持ってきました。
「これはよしきさんからのプレゼントです。AIアバターたなかさんがよしきさんとそうだんして、かってもらいました。ゆりこさん、きょうからブログをはじめます。ゆりこさんのことばで、ゆりこさんじしんのことをはっしんするのです」
今日子さんは慣れた手つきでパソコンをセッティングしていきます。
私は今日子さんがパソコンを操作している姿に感心しながらも、「いやいや待って！ブログって何？？？」って両方の顔をしていたと思います。
若いころ私は、由樹を育てながら医療事務の仕事をしていました。
でも65歳で定年した後は、パソコンを触る機会なんて、まったく無かったのです。
「今日子さん、こんないいパソコン用意してもらったのに悪いけど、ブログって何だかわからないし、無理なんじゃないかな…」
「ゆりこさん、いまのあなたにひつようなこと。じぶんのみはじぶんでまもるつよさ、そして、じぶんのかのうせいをひろげてだれかのやくにたつこと」
「いやいや、この歳で無理でしょ…」って言いたかったのですが、すかさず今日子さんが、「ゆりこさんならできます。それがわたしのぶんせきけっかです」と言ったので、なんだか「できる」気がしたのです。
この頃の私は、何もかも今日子さん頼りになっていたのかもしれません…
それから、私の日課のなかに、「ブログの時間」が加わりました。
やってみると、今の超超超高齢化社会では、ブログやYouTubeをやっている高齢者が大勢いたのです。
「負けてらんねー」って遊心がよく言っていたのを思い出し、私は【だまされない！あきらめない！80歳のリアルライフ】というブログサイトを立ち上げました。
もちろん、今日のできごとを教訓にして「だまされない！訪問販売・点検商法などの詐欺被害にあわない対策」という記事もアップしています。
さぁ、本当の自立を目指して！
ゆりこ80歳、新しいスタートを切ったのでした。
つづく…
読んでくれてうれしいです。
空想小説【介護ロボット 今日子さん 第８話 the top of デイケアみらい2055】も是非、お楽しみください！
今日子さんシリーズ、全エピソードをまとめています。
