空想小説【介護ロボット 今日子さん 第8話 the top of デイケアみらい2055】

ゆーり
ゆーり

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第1話から読みたい方は、こちら(今日子さんシリーズ目次)へどうぞ!

地球温暖化の影響により、年々世界の平均気温は上昇しています。

人気のAI気象予報士によると、今年は更に暖冬になるそうです。

11月も終わりを迎えようとしていた頃、デイケアみらいの利用者達はいつもにも増して目の色を変え、リハビリに励んでいます。

その理由をミッキーが教えてくれました。

「ゆりこさん、しらなかったの?もうすぐね、【the top of デイケアみらい2055】のコンテストがあるのよ。ほら、そこのおしらせみて」

一人ずつ運動能力を測定し、伸び率を競うコンテストです。

ものすごい賞金!なるほど、いくつになってもやっぱり原動力はお金???

そういう私も実は【the top of デイケアみらい2055】にすぐにエントリーして、今日子さんとのトレーニング時間を倍に増やしていたのでした。

2055年12月15日、私のコンテストの日!

まるで、小学生の頃に経験した運動会のような気持ちになっていました。

でも、『お金』という大人には魅力的なご褒美のある運動会。

私はまさに目の色を変えてコンテストに挑んだのです。

①身体バランスチェック ②筋力テスト ③歩行テスト

「ゆりこさん、ものすごく気合い入ってましたね!」

コンテストを終えた私に井上さんが声をかけてくれました。

本当のところ賞金目当てでしたが、私は「今日子さんの喜ぶ顔が見たいから」なんて、言い訳がましく答えたのを覚えています。

すかさずコミュ力の高いミッキーに「きょうこさんはひょうじょうないでしょ!」とつっこまれ、笑ってごまかすしかありませんでした。

「賞金目当てでいいんですよ!これ、一番利用者さん頑張るから。本当の力ややる気が見えるでしょ。だから年明けにさぼってたらガンガン追い込みますよ!」

さすが【身体機能・自立支援特化型ランキング】1位のデイケアみらい!

ちなみにデイケアみらいも1位になることで、国から補助金をもらっている。

補助金の使い道は自由でその一部を【the top of デイケアみらい2055】の賞金に使っているそうです。

井上さんは筋肉だけじゃない、知的能力もかなり発達している人でした。

結果発表は、年の瀬、最後の週だそうです。

「賞金、何に使おうかな」なんてニヤニヤしながらドローンで家に帰ると今日子さんが出迎えてくれました。

「よくがんばりましたね。けっかによって、そつぎょうもみえてくるかもしれませんね」と今日子さんが言いました。

「えっ、卒業?」私は瞬間的に思ったのです。

デイケアみらいを卒業したら、今日子さんからも卒業???

一瞬のうちに後悔が先走りました。コンテストがんばるんじゃなかった…

そんな私を今日子さんはいち早く察したようでした。

「ゆりこさん、ほんとうのじりつ、からだだけじゃない。こころもです。あなたにとって、わたしがいなくなるとき、それがほんとうのじりつ。あなたはひとりじゃない。つよくなって!」

今日子さんの言葉に思わず涙があふれ、そんな私の背中を今日子さんがさすってくれました。

きっと、私みたいな人、たくさんいるんじゃないかな…

私はお正月に遊びに来た遊心にやり方を聞いて、【介護ロボを愛する会】というオンラインコミュニティを立ち上げました。

あっ、【the top of デイケアみらい2055】の結果ですか?

エントリーした23人の利用者のうち、なんと、私は第3位に輝いたのでした。

表彰台に立ち、いつも控えめなエリーから賞金「半年分の利用料還付」を受け取りました。

驚いたことに1位は片山さん!

1年前から狙っていたそうで表彰台のトップに立った日を最後にデイケアみらいを卒業していきました。

年が明けてから、私の知らないところでAIアバター田中ケアマネが今日子さんや井上さんと私の卒業時期について相談していたようです。

私は複雑な気持ちを抱えながら【介護ロボを愛する会】に入ってくれたメンバーとお互いの悩みを分かち合い、励まし合うようになっていきました。

つづく…

ゆーり
ゆーり

読んでくれてうれしいです。
空想小説【介護ロボット今日子さん】第9話もお楽しみに!

ゆーり
ゆーり

今日子さんシリーズ、全エピソードをまとめています。

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