空想小説【介護ロボット 今日子さん 第9話 今日子さんが病気になった!?】

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目次

今日子さんが病気になった!?

3月に入り、もうすぐ桜が満開になります。

地球温暖化の影響で桜の開花も年々早くなっているようです。

私のリハビリは順調に進み、自宅でお風呂に入ることができるようになりました。

「あ~、さっぱりしたぁ」私がお風呂から上がってリビングに戻ると、なんだか今日子さんの様子がおかしい…

えっ、動かない!?顔色悪い!?

「今日子さん!」呼んでも返事がありません。

えっ、病気?違う、違う、故障?「今日子さーん!今日子さーん!」今日子さんの肩を叩きながら大声で呼んでも反応がありません。

落ち着け!私… 

私は深呼吸をしてから、タブレットを操作してAIアバター田中ケアマネを呼び出しました。

「今日子さんの様子がおかしいんです!病気…いや違う、故障したんでしょうか?」AIアバター田中ケアマネにそう尋ねると、「あー、たまにあるんです。フューチャーの山本さんに伝えて、遠隔操作で直してもらいますね。でもちょっと時間がかかるかも…。ゆりこさん、直るまで一人で大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です。私のことより、どうか今日子さんをよろしくお願いします!」

私は、由樹が小さい頃、高熱を出して慌てふためいた時と同じような気持ちになっていました。

でも、冷えピタを貼ったり、薬を飲ませるわけにもいかず、何もできないことに気がついたのです。

ただ、今日子さんが私にしてくれたように、肩をさすってあげるだけ…

ふと、今の私の姿を見て今日子さんならなんて言うのかが頭によぎりました。

「とっとと、ねる前のストレッチをやるのです」きっと今日子さんならそう言うはず…

私はいつもにも増して、入念にストレッチをやりました。今日子さんが見てくれていると思って…

リビングの電気はつけたまま、私は寝室に行き、明日のためにしっかりと睡眠をとることにしました。

いつもより早めに起きてリビングに行きましたが、今日子さんは昨日のまま。

フューチャーの山本さんの顔を思い浮かべながら、「できる男じゃなかったんだ」って、ぼやきながら朝ごはんの準備をしました。

あえて二人分の朝ごはんを作ってテーブルに並べてみました。

「ひとりぶんでいいですからね」って今日子さんが言ってくれるんじゃないかと思ったんです。

何も言ってくれない今日子さん。怒られないのも淋しいな…

気を取り直して、午前中は洗濯を済ませてから、今日子さんの傍でブログ活動に励みました。

キーボードを叩いて指先を動かすのは認知症の予防になります。

オンラインコミュニティ【介護ロボを愛する会】のメンバーにロボットの故障について聞いてみましたが、「故障なんて聞いたことないよ」「心配だね」「もう一回、ケアマネに聞いてみたら」と言われるだけで、なす術がありませんでした。

私はチラチラと何度も今日子さんを見ながら、午後からも決められた日課に取り組みました。

もどかしい気持ちのまま、時間だけが過ぎていきます。

AIアバター田中ケアマネには「大丈夫です!」って言った手前、私がしっかりしないといけない。待つしかない…

夕食を食べながら、そう覚悟を決めたとき、タブレットの着信音が鳴りモニターにAIアバター田中ケアマネの姿が映し出されました。

そ、そして今日子さんが動いて私の方を向いたのです!!

AIアバター田中ケアマネ「ゆりこさん、お疲れ様でした。合格ですよ!」

今日子さん「よくがんばりましたね。ごうかくです」

2人は私に向かってそう言いました。

これは…私の卒業試験だったのです。

騙されていたのに、私は怒る気持ちにはなれませんでした。ただただ、今日子さんが元気でよかった。それだけです。

なので、みんなでまた笑いました。今日子さんとハグをしながら。

故障を装っていた今日子さん、ずっと私の様子を見ていたそうです。

「あさごはんをふたりぶんつくるのはむだですよ」今日子さんはそう言いながらも、たくさん褒めてくれました。

厳しいけど、やっぱり褒め上手な今日子さん。

もし、今日子さんがいなくなったとしても、私の心の中には今日子さんの言葉がたくさん残っている。

私はもう一人でも大丈夫なんだ…そう思えた瞬間でした。

つづく…

読んでくれてありがとうございます。
次回が最終話となります。
感動のラスト、お楽しみに!

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