空想小説【介護ロボット 今日子さん 第3話】

毎日がリハビリ

福祉用具事業所フューチャーの山本さんが手すりや自動運転車椅子のセッティングを終え、帰っていきました。

今日子さんと二人きりになり、なんとなくソワソワしていると、
「ゆりこさん、ばんごはんのしたくをしましょう」と今日子さんが発泡スチロールに入った食材を持ってきました。
今日子さんが作ってくれるのかな…と期待していたら、「さあ、はやく」と今日子さんが言います。
「ちょうりはのうのかっせいかにやくだちます。ゆりこさんがこのしょくざいでメニューをかんがえるのです」
「えっー、退院していきなりですか!」と言いたいのをおさえて、「はい…」と素直に発泡スチロールの箱を開けてみました。


ケアマネジャーの田中さんに勧められた食材パック【高齢者向け・自炊用食材・1週間分】のお試しを頼んでおいたのです。
私は、簡単にできる煮魚、なすの煮びたし、みそ汁を作ることにしました。
すると今日子さんが一瞬のうちにエネルギー量や栄養バランスをはじき出します。
「みそしるにはほうれんそう、しめじをいれて、みそはいれすぎないようにしてください。ひとりぶんでいいですからね」と今日子さんが言いました。
「そっか、今日子さんは食べられないですもんね」と私が笑うと、今日子さんは「あはは」と私に合わせるように無表情のままで笑ってくれました。
今日子さんはこれから私が料理しやすいように、まな板や鍋などの置き場所を変えてくれました。
私が料理をしている間、今日子さんは私のそばで見守ってくれます。身体の向きを変えるときにバランスを崩さないか真剣な様子で私に寄り添ってくれていました。

私が夕食の洗い物をすませると、今日子さんもほっと一息ついているように感じました。
「今日子さん、ありがとう。入院前は毎日料理するのが面倒だったけど、久しぶりにしたら、なんだか楽しかったです」と今日子さんにお礼を言いました。
今日子さんは私の方を向いて、右手で「グッジョブ!」のポーズをしてくれました。
「嬉しい!」やっぱり今日子さんは褒め上手です。

退院後の疲れも吹き飛び、パジャマに着替えた私は今日子さんとストレッチ体操をしました。
もともと、不眠に悩まされていた私。快眠を促すストレッチを今日子さんが教えてくれました。


「あしたはデイケアにいくひです。きょうはゆっくりやすみましょう。おやすみなさい」と、今日子さんは言いました。
「おやすみなさい」と言える相手がいる…安心に包まれて、私は深い眠りにつきました。

つづく…