- 浴槽をまたぐのが怖くなった
- 滑りそうで怖い
- 家族の介助も限界
このような不安を抱えながら、自宅で入浴されている高齢者の方は多いのではないでしょうか。
高齢になると、入浴動作は転倒や事故のリスクが高くなる場面のひとつです。
介護保険を利用すれば、安全に・安心して入浴を続けるための支援を受けることができます。
この記事では、現役のケアマネジャーが
- 1人での入浴が難しくなったときに使える介護保険サービス
- 具体的な利用例や費用
- 自宅での工夫のポイント
などを、わかりやすく解説します。
「どんなサービスがあるの?」「費用はいくらかかるの?」といった疑問を解消し、ご本人・ご家族が安心して在宅生活を続けるためのヒントにしてください。
入浴が難しくなるときに、よくある場面【現場の実例】
要介護状態になる方を見ていると、「入浴」が最初のつまずきになるケースがとても多いものです。
筆者現場でよくある例をいくつかご紹介します。
- 浴槽をまたぐ動作が怖くなり、入浴を避けるようになった
- 浴室で転倒したことがきっかけで、1人では入れなくなった
- 家族が体調不良で介助に限界を感じている
- 冬場の寒暖差によるヒートショックを心配している
- 認知症の進行で入浴自体を拒否するようになった
きっかけはほんの小さな変化でも「一度怖い思いをした」「介助が大変になった」ことで、入浴習慣が途切れてしまうことも少なくありません。
そのままにしていると、清潔保持が難しくなるだけではなく、感染症や皮膚トラブル、QOL(生活の質)の低下にもつながります。
まずは要介護認定を確認!介護サービスの利用の基本
介護保険サービスを利用するには「要介護(要支援)認定」を受けることが必要です。
すでに介護認定を受けている方は、担当のケアマネジャーに相談すれば、状況に合った入浴支援サービスを組み立ててもらえます。



介護保険の申請がまだの方は、こちらの記事を参考にしてみてください。


入浴を支える主な介護保険サービス【状況別に紹介】
入浴の困りごとといっても、身体の状態や住環境によって、必要な支援はさまざまです。
ここでは、代表的な介護保険サービスを3つご紹介します。
| サービス名 | 対応する状況 | サービス内容 | 費用(1割負担) | メリット | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|---|
| 訪問介護 | 自宅で入浴できる環境はあるが、1人で入るのが不安・介助が必要 | 自宅浴室での入浴介助(洗身・洗髪・着脱介助) | 約400円~600円/回 | 自宅で慣れた環境のまま入浴 | 軽度~中度の方、部分的な介助が必要な方 |
| デイサービス | 自宅で入浴する環境が危険、外出や交流も兼ねたい場合 | 施設での入浴(個別に介助)機能訓練やレクレーション | 約700円~1000円/回(食事代は別途必要) | 送迎付きで安心、閉じこもりや家族の休息にもなる | 自宅での入浴が難しい方、外出の機会を兼ねたい方 |
| 訪問入浴 | 寝たきり・重度で自宅の浴槽が使えない場合 | 専用浴槽を持ち込み、看護師と介護職で全身入浴 | 約1000円~1300円/回 | 重度の方でも自宅で全身浴が可能 | 寝たきり・中重度の方、医療的な見守りが必要な方 |
訪問介護(ホームヘルプ)


ホームヘルパーが自宅に訪問し、入浴や清拭の介助を行います。
「自宅で入浴できる環境はあるけど、1人では不安」「部分的な介助だけお願いしたい」という方に向いています。
- 浴槽の出入りの介助
- 洗身や洗髪の介助
- 衣服の着脱や整容の介助
- 費用:約400円~600円/回(1割負担の場合)
- 利用回数:週1~数回(本人の状態に合わせて設定)
ヘルパーが安全を確認しながら介助するため、転倒や事故のリスクを減らすことができます。



家族介護が難しい場合にも、心強いサービスです。
デイサービス(通所介護)


施設に通って、入浴や機能訓練、レクレーション、昼食などを受けるサービスです。
「自宅の浴槽が危険」「1人で留守番させるのが心配」という場合にも利用しやすい方法です。
- 送迎付きで施設へ通う
- 職員による個別・機械浴での入浴介助
- レクレーションや機能訓練もあり、楽しみの場になる
- 費用:約700円~1000円/回(1割負担の場合、食事代は別途必要)
- 週1回から利用可能(本人の状態に合わせて設定)
施設では安全対策が整っているため、転倒や事故の心配が少なく、安心して入浴できます。
冬場の寒暖差によるヒートショックの心配もありません。



閉じこもり予防や、介護者の休息にもつながります。
訪問入浴


専用の浴槽を自宅に持ち込み、看護師と介護職がチームで入浴を行うサービスです。
- 看護師がバイタルチェックを実施
- 移動式の浴槽で全身浴
- 入浴後の体調確認
- 費用:約1000円~1300円/回(1割負担の場合)
- 週1~2回の利用が一般的
ベッド上で生活している方や、介助が難しい重度の方でも、入浴の気持ちよさを味わうことができます。



自宅で入浴が難しい方にとって、身体的にも精神的にも大きな支えになるサービスです。
住宅改修や福祉用具で「自分で入る」をサポート


介護保険では、入浴介助サービスだけでなく、自立支援のための環境整備も支援対象です。
介護保険を使って、住宅改修やレンタル・購入ができるため、自己負担が軽く済みます。
住宅改修(上限20万円まで)
- 浴室や脱衣室への手すり設置
- 浴槽の交換や段差の解消
- 滑りにくい床材への変更



一度の改修で大きく安全性が高まるため、転倒予防に非常に有効です。
福祉用具のレンタル・購入
- シャワーチェアー(立ち上がりやすい、座って洗える椅子)
- 浴槽台(またぎ動作を補助)
- 置き型手すりや浴槽に取り付けるグリップ型手すり
「まだ自分で入浴したい」「できることは続けたい」という方には、こうした工夫が大きな助けになります。
浴室や浴槽の構造・浴室の広さがどのくらいあるかによって、手すりの設置が難しい場合があります。ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談するのがよいでしょう。



介護保険は使えませんが、洗い場や浴槽の中に滑り止めマットを敷くのも有効です。数千円程度で購入でき、使っている方も多いですよ。
まとめ


入浴は、生活の中で楽しみやリラックスの時間でもあります。
- 1人で入浴が難しくなったら、介護保険サービスの利用が有効
- 訪問介護・デイサービス・訪問入浴など、状態に応じて選択可能
- 住宅改修・福祉用具で自立をサポートできる
- 早めの相談が事故防止と安心につながる
まずは、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してみましょう。
現場の専門職と一緒に考えることで、ご本人・ご家族の心配や負担を減らしながら、安全で安心な入浴環境を整えることができます。



ちょっとした工夫とサービスの活用で、また気持ちよく、安心して入浴できるようになるケースはたくさんあります。
この記事を参考に、ご自身に合う方法をケアマネジャーと一緒に考えていきましょう。

