成年後見制度の申立てが必要な人に、ケアマネジャーができること~実際に行った支援をもとに主任ケアマネが徹底解説~

ケアマネジャーは、認知症や知的障害、精神障害などにより、判断能力が不十分な方の支援をすることが多くあります。

頼れる家族がいればよいですが、身寄りのない人、家族がいても関わりがない(関わることができない)など、さまざまです。

頼れる家族がいなければ、このように困ることがあるかもしれません。

  • 財産管理ができず、光熱費などの支払いが未払いになる
  • 不利益になる契約を結んでしまう(悪徳商法による被害)
  • 必要なサービスの契約ができない

利用者さんの生活に支障が出てきたとき、日常生活自立支援事業の活用や、成年後見制度の申立てを検討すべきかどうか、悩むケアマネさんは多いのではないでしょうか。

ケアマネは成年後見制度の申立て自体を行うことはできません。

では、ケアマネとしてできることは...

今回は、私が実際に成年後見制度の申立てに関わったときの手順をもとに「成年後見制度の申立てが必要な人にケアマネジャーができること」をまとめておきたいと思います。

成年後見制度におけるケアマネジャーの実務フロー図・7つのステップ解説図

各ステップの詳細は以下の項目で詳しく説明しています。

目次

成年後見制度の必要性を検討、整理してまとめておく

まずは、成年後見制度の必要性を検討します。

一人で悩まずに、以下の人に相談するとよいと思います。

  • 所属している居宅介護支援事業所の主任ケアマネジャー
  • 管轄の地域包括支援センター

なかには、成年後見制度より、日常生活自立支援事業の利用で十分な人もいるかもしれません。

契約内容について判断し得る能力がある人は、日常生活自立支援事業の方がかかる費用を抑えることができます。

日常生活自立支援事業と成年後見制度の比較表

スクロールできます
契約能力申請~開始までの期間費用
日常生活自立支援事業ある人2~6ヶ月月1回の支援で月額1200円前後(生活保護受給者は無料)
成年後見制度不十分な人1.5か月~3ヵ月申立て費用(※1)+月額2~6万円(生活保護受給者は助成あり)

(※1)申立てを弁護士や司法書士に依頼する場合は追加で10万円~30万円程度の費用がかかります。

何に困っていて、どんな支援が必要なのか?

成年後見制度の申立てが必要な理由について、整理してまとめておきましょう。

筆者

これをしておくことで、後から必要になる本人情報シートの作成に役立ちますよ。

もし、その方が生活保護を受給されていたら、福祉事務所の担当ケースワーカーにも相談しましょう。

利用者(家族)に成年後見制度について、わかりやすく説明する 

ケアマネが利用者(家族)に制度の説明をすることは、とても大切なことです。

普段から接しているケアマネなら、その方にとって、伝わりやすい説明の仕方ができると思います。

例)利用者への伝え方
  • 電気やガスが止まらないように、お金の管理を手伝ってもらいませんか?
  • 詐欺にあわないように、あなたの財産を守ってくれる人を作りませんか?
  • 施設に入ることになったとき、契約のお手伝いをしてくれる人を探しましょう。

先にまとめておいた”成年後見制度の必要性”を参考に、より伝わる言葉で利用者(家族)の意思確認を行いましょう。

なかには、必要性があるにも関わらず、「自分は大丈夫」と申立てを拒む人もいるかもしれません。

そのようなときは、管轄の地域包括支援センターなどにも相談してみましょう。

申立人は誰?

法律上、成年後見の申立てができるのは、本人、配偶者、4親等以内の親族、検察官、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人、市町村長などに限られています。

本人(家族)が成年後見制度の申立てに同意されたら、申立て人について相談しておくとよいです

申立て支援をしてくれる専門家に繋ぐ

【厚生労働省|成年後見はやわかり】にある👉お近くの権利擁護相談窓口検索を活用すると、成年後見支援センターなどの連絡先を知ることができます。

その他にも、地域包括支援センターや地域のケアマネジャーと繋がりのある、弁護士や司法書士・社会福祉士に相談する方法もあります。

私が支援したケースでは…

私は仕事で繋がりのあった成年後見制度を支援する社会福祉士さんに相談しました。申立書の作成はその方が司法書士さんへ依頼。身寄りのない方で、申立て人は「本人」となりました。

申立てに必要な書類の準備は、本人・家族が行っても問題ありませんが、複雑で難しいです。

専門家に繋ぐことが、一番よい方法だと思います。

参考:後見開始|裁判所

本人情報シートの作成

成年後見制度の申立てには、鑑定の要否を判断するための医師の診断書が必要です。

利用者のなかには医師の前では、「大丈夫です」「困ってません」と、答える方もいるかもしれません。

医師が普段の生活状況まで、細かく把握できていないことはよくあります。

そこで、本人の生活を支える福祉関係者などが、本人の生活状況などについての客観的な情報を医師に伝えるため、本人情報シートが用いられています。

👉本人情報シートはこちらからダウンロード

本人情報シートは、家庭裁判所にも提出が必要です。

筆者

先にまとめておいた資料を参考に作成しましょう。

診断書を作成してもらう医師の確認

診断書を作成してもらう医師について、法的な制限はありません。

本人の状態をよく知る主治医

精神科や心療内科、脳神経内科の医師であれば、尚良いと思います。

医師に、ケアマネが作成した本人情報シートを参考にしてもらいながら、診断書を作ってもらいましょう。

診察時にケアマネジャーが同行できるとよいですね。

家庭裁判所に鑑定が必要と判断された場合は、10万円~20万円程度の費用がかかります。

医師にしっかりと本人の状態を伝えることが大切です。

私が支援したケースでは…

その方は、普段は訪問診療ですが脳疾患により入院後、退院してからも通院が続いていたので、脳神経外科の医師に診断書の作成をお願いしました。予約日に病院に行けるかどうか不安があったので、この時の診察に同行。質問されることも結構あったので、同行してよかったです。鑑定もなく済みました。

成年後見人等候補者と打ち合わせ

本人情報シート・医師の診断書ができれば、弁護士や司法書士などの専門家が必要な書類を揃えて、家庭裁判所に提出します。

ケアマネが関わる成年後見制度においては、選任される成年後見人等は、弁護士・司法書士・社会福祉士が多いと思います。

成年後見人等(補助・補佐・後見)が選任されるまでは数か月かかります。

その間に、成年後見人等候補者と打ち合わせをしておくとスムーズです。

審判書が届いたかどうかの確認方法

審判書は申立人、本人、成年後見人等に書面(郵便)で届きます。

審判書が届いてから2週間以内に不服申し立てがされない場合、成年後見等開始審判の法的な効力が確定します。

本人が郵便を受け取れない、届いたかどうかわからない・無くすなどの心配がある方は注意が必要です。

  1. 選任された成年後見人等に審判書が届いたタイミングで、ケアマネが利用者に確認
  2. 届いたことが確認できたらケアマネが成年後見人等に連絡

このように、事前に打ち合わせておくのとよいでしょう。

私が支援したケースでは…

無くされる可能性が高かったので、ヘルパーさんにも協力してもらい審判書を確認することができました。周りの協力もあると心強いです。

成年後見人等がサービス関係者との顔合わせを希望するか?

成年後見人等が選任後に関係者との顔合わせを希望する場合、前もってサービス事業者に伝えておきましょう。

サービス事業者も、買い物支援のお金の取り扱い利用料の支払い方法など、成年後見人等に確認しておく必要があります。

筆者

成年後見人等が確定したタイミングで、サービス担当者会議などで顔合わせができるとよいですね。

成年後見人等と連携方法を確認

成年後見人等と連携方法を確認しておきます。

  • 成年後見人等が支援する具体的な内容
  • サービス担当者会議の案内が必要か?
  • ケアプランの署名は誰がする?
  • 利用票など書類の保管方法は?

成年後見人等としっかり連携して、利用者さんの権利を守っていきましょう。

まとめ:成年後見制度、ケアマネができることを支援しよう

成年後見制度の申立てを検討する段階から、実際に成年後見人等(補助・補佐・後見)が実務を行うようになるまで、数か月を要します。

ケアマネとして、どのタイミングで何をしたらよいのか、迷うことも多いと思います。

今回は、私の経験をもとに、「成年後見制度の申立てが必要な人にケアマネジャーができること」をまとめてみました。

私が支援した利用者さんは、保佐人がついたことで、電気代が払えず困ることがなくなりました。

成年後見制度の申立てに関わる支援は、そう頻回にあるものではありません。

いざというときのために、この記事を「備忘録」としてもご活用ください。

利用者さんの権利擁護のために、ケアマネとしてできることを支援していきましょう。

本記事に記載されているノウハウおよび手順は、筆者(主任介護支援専門員)の長年の実務経験と、特定の地域・事例における解釈に基づくものです。介護保険法、運営基準、地域の条例、および各保険者(市町村)の解釈は常に更新・変更される可能性があります。個別の判断や法的な解釈については、必ず所属法人の指導者、専門機関、または関係自治体にご確認のうえ、ご自身の責任においてご活用ください。


こちらの記事では、成年後見制度と同様に支援する機会の少ない “みなし2号被保険者について” まとめています。よかったら参考にしてください。

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