【現役ケアマネが語るシャドーワーク】「救急搬送時の同乗」は保険外サービスで対応?厚労省資料から考える本気で取り組む地域ケア会議

ケアマネジャーの従業者数が横ばい・減少傾向となった一因と言っても過言ではない、「ケアマネのシャドーワーク」問題。

私は居宅ケアマネ歴、もうすぐ15年の主任ケアマネジャーです。

これまで私も、このシャドーワーク問題に直面し、「これってケアマネの仕事?」と疑問を持ちながら対応した経験があります。

私と同じような経験をもつケアマネさんは、とても多いのではないでしょうか。

このケアマネのシャドーワークについての議論は、2024年12月厚労省の「ケアマネジメントに関わる諸課題に関する検討会・中間整理」から取り上げられるようになりました。

参考資料:ケアマネジメントに関わる諸課題に関する検討会・中間整理|厚生労働省

そして、2025年12月第133回社会保障審議会・介護保険部会の参考資料にもあるように、ケアマネ業務の在り方が整理され、ケアマネは利用者へのケアマネジメント業務に注力できる環境になる…はず?…だと思いたい。

参考:第133回社会保障審議会・介護保険部会の資料について|厚生労働省

しかし、この資料の中には、現役ケアマネとして見逃してはいけない部分があります。

4つの類型に整理されたケアマネ業務のひとつ、「保険外サービスとして対応しうる業務」の主な事例として「救急搬送時の同乗」があげられていることです。

今回は、過去の私のシャドーワーク実体験を通じ、「救急搬送時の同乗」について考察します。

そして、この厚労省の資料の中には、シャドーワーク問題の解決の糸口になるかもしれない地域の取組事例が紹介されていました。

このすばらしい地域の取組事例をもとに、地域ケア会議の活用についても独自の視点で深掘りしたいと思います。

厚生労働省資料「ケアマネ業務の在り方」の図解
目次

【厚労省資料より】保険外サービスとして対応しうる業務って?

第133回社会保障審議会・介護保険部会 参考資料113ページ抜粋「ケアマネジャー業務の類型・主な事例」

引用元:第133回社会保障審議会・介護保険部会 参考資料P113より抜粋

上の抜粋した資料では、「保険外サービスとして対応しうる業務」として、以下の事例があげられています。

  • 郵便・宅配便等の発送・受取
  • 書類作成・発送
  • 代筆・代読
  • 救急搬送時の同乗

この4つを見比べると、明らかに「救急搬送時の同乗」だけ、支援の重さや費やす時間が他とは比べ物にならないと疑問を感じませんか?

「書類作成」や「代筆」についても、何の書類?何の代筆?というところが肝心ですが、私が調べた限り、明示されていませんでした。

この「保険外サービスとして対応しうる業務」は、

  • 保険外サービスとしてケアマネが対応
  • 民間事業者と連携して対応
  • 介護報酬にインセンティブをつける

などの意見が、厚労省の検討会であげられています。

現役ケアマネの視点では、「報酬があればやりますよ」とは簡単に言えないですし、救急搬送などいつ起こるかわからない対応を民間事業者と連携するのも無理があるのではないかと思いました。

正直、突っ込みどころが満載の印象です。

【ケアマネ・シャドーワーク実体験】救急搬送時の対応

私はこれまで複数回、利用者宅で救急車を呼んだことがありますが、同乗はしたことはありません。

なぜなら、利用者宅に原付バイクを置いたまま、救急車に同乗して病院まで行けば、帰りに困るからです。

今から6~7年ぐらい前(2020年頃)の話です。

原付バイクで後から追いかけ、病院に到着、ここから延々に足止めさせられてしまった経験があります。

病院関係者に状況や家族の連絡先を伝えて終わればよいですが、病院側も「もし入院にならなかったら、連れて帰ってもらう人が必要」という心配があるのだと思います。

看護師に「もう帰っていいですか?」と聞き、「検査が終わるまで待っててください」と言われ、その看護師は姿が見えず、他の看護師にまた「もう帰っていいですか?」と聞くと、「ちょっとお待ちください」と言われる。

結局、次の利用者宅訪問のタイムリミットがきたところで、「予定があるので帰ります」と看護師に告げて、病院を後にしました。

「救急搬送時の同乗」をしなくても病院と連携できれば困らない

私はこの救急搬送時のシャドーワーク実体験から、今は救急車を呼んでも病院に行くことはしていません。

すぐに家族に連絡が取れれば、後はお任せしていますし、取れない場合や身近に家族がいない場合は、病院に電話を入れ、入院にならなかったときの対応方法を相談するようにしています。

普通のタクシーか介護タクシーで足りることがほとんどです。

また、過去に救急隊員の方に「一緒に来てください」と言われたこともありますが、今は「病院には行けません」と伝えると、無理強いされる救急隊員の方もいないです。

この対応で後から困ることもありません。

昔に比べ、ケアマネと病院は連携が図りやすくなっているし、救急隊員の方も含め、お互いの役割も認識できていると感じています。

【ケアマネのシャドーワーク問題】解決の糸口になるかもしれない地域の事例

ここまでは、ケアマネのシャドーワーク問題について、社会保障審議会・介護保険部会の資料をもとに、ネガティブな意見を申し上げたかもしれません。

でも、決してそれだけではなく、解決の糸口になるかもしれないと私が思った、地域のすばらしい取組例も紹介したいと思います。

島根県出雲市のすばらしい取組

この参考資料の中で、地域の取組例があげられていました。

第133回社会保障審議会・介護保険部会 参考資料P95の引用「頼れる身寄りがいない高齢者等を支える地域での取組例」

引用元:第133回社会保障審議会・介護保険部会 参考資料P95

私がすばらしいと思ったのは、この資料の真ん中にある、島根県出雲市の取組。

インターネットで調べると、地域住民間で高齢者等を支え合う互助団体が市内に18団体存在し、家事支援や通院付き添い、見守りや話し相手等の支援も低料金で実施しているようです。

参考:出雲市助け合い活動団体パンフレット|出雲市住民参加型在宅福祉サービス団体連絡会

かつて私は、地域ケア会議で「ワンオペ育児中に私を救ってくれた子育てファミリーサポート、あの仕組みの高齢者版があったらいいんじゃないかと思う」と発言したことがあります。

参考:ファミリー・サポート・センターのご案内|子ども家庭庁

  • 定年後、まだまだ元気な高齢者は多い
  • ボランティアは腰が引けるけど「少しのお小遣い稼ぎ」を兼ねて誰かの役に立ちたいというニーズはきっとある
  • 「困っている高齢者」と「動ける高齢者」を繋ぐことで、「動ける高齢者」もより元気でいられるんじゃないか

と、思ったんです。

この島根県出雲市の取組は、私が勝手に思っているだけかもしれませんが、私が思い描いていた理想の取組だと感じました。

市町村主体で行う地域ケア会議に期待したいこと

○ 一方で、特に、頼れる身寄りがいない高齢者等への生活課題については、地域の適切なつなぎ先が明確化されていないこと等により、現在でも、ケアマネジャー等が法定外業務(いわゆるシャドウワーク)として実施せざるを得ないケースも増加している。ケアマネジャーがその専門性を発揮し、個々の利用者に対するケアマネジメント業務に注力できるようにすることが重要である中で、地域課題として地域全体で対応を協議することが必要である。
○ こうした課題に対応するに当たっては、基本的には市町村が主体となって、地域包括支援センターやケアマネジャーの協力を得ながら、関係機関間の連携により、地域ケア会議等を活用して地域課題として議論し、制度の活用や地域資源の活用を含めて、必要な資源を整理するとともに、必要な関係者・関連事業につなげていくことが考えられる。

引用元:第133回社会保障審議会・介護保険部会 資料1 P26より抜粋

社会保障審議会・介護保険部会 資料1 P26に、特に、頼れる身寄りがいない高齢者等への生活課題が、ケアマネがシャドーワークとして実施せざるを得ないケースも増加しているとあります。

そして、こうした課題を対応するにあたり、基本的には市町村が主体となって、関係者を含めて地域課題として協議していくことが必要と書かれています。

地域ケア会議の活用ですね。

私の地域の「地域ケア会議」は、地域包括支援センターの呼びかけで地域の自治会長民生委員老人福祉委員医師社協の生活支援コーディネーター介護保険サービス事業者等が出席しています。

課題について現状を共有し、「こういう取組が必要」とか「こんな社会資源があったらいいな」と意見を出し合います。

ほとんどは、意見を出し合うだけで終わってしまい、また次の課題に移っていく…

かくいう私も、意見を出すことしかできない、イチケアマネにすぎないのです。

市町村主体というのが、イコール、委託をしている事業(地域包括支援センターや生活支援コーディネーター)という認識なのか私にはわかりません。

ただ、本気の地域ケア会議をするのなら、市町村の担当者も出席するべきなのではないかと思っています。

私のように口だけで言うのは簡単。それを実行に移すのは難しい。

そう思うと、島根県出雲市の取組は実現できていることが本当にすばらしいと感じるし、実現に向けてどのように取り組んだのかがわかれば、他の地域の参考になるのではないかと思いました。

まとめ:保険外サービスで対応しうる業務の精査と地域ケア会議の活用がカギ

今回は、社会保障審議会・介護保険部会の資料をもとに、過去の私のシャドーワーク実体験を通じ、保険外サービスとして対応しうる業務「救急搬送時の同乗」について考察しました。

「救急搬送時の同乗」については、病院・ケアマネが連携することで必ずしもシャドーワークに繋がるものではないこと。

そのほかの「書類作成」や「代筆」についても、何の書類?何の代筆?というところが肝心であり、「保険外サービスで対応しうる業務」の事例については、もっと精査することが重要なのではないかと感じました。

そして、ケアマネのシャドーワーク問題の解決の糸口に繋がるかもしれない島根県出雲市のすばらしい取組も紹介しました。

新しい社会資源の創出は、まずは地域ケア会議から。

すばらしい取組事例を参考に、本気で取り組む地域ケア会議がケアマネのシャドーワーク問題の解決に繋がることを祈って…

日々の利用者対応と管理業務でいっぱいいっぱい、今は口だけの意見しか言えない主任ケアマネの私ですが、ケアマネのシャドーワーク問題における社会資源の創出には、出来る限り協力していきたいと思っています。


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ケアマネplusライターでは、AIを活用したケアマネ業務の時短術も紹介しています。

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