【初めての親の介護】自分の生活を守るためにケアマネジャーが伝えたい4つのこと

インターネットで「親の介護」と検索すると、「親の介護 メンタルやられた」「親の介護 人生終わった」などのワードが出てきます。

ケアマネジャーとしては、とても心が痛む、重たいワードです。

民法877条第1項に「直系血族および兄弟姉妹は、互いに扶養する義務がある」とあります。

法律上、親の介護は子に扶養義務があると定めているのです。

これには、経済的な扶養だけでなく、身体的な介護も含まれています。

親の介護は突然やってきます。

【2022年厚生労働省 国民生活基礎調査「要介護者等」の年齢階級別構成割合】

40歳~64歳65歳~69歳70歳~74歳75歳~80歳
2.6%3.4%7.1%12.9%

参考:2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況 IV 介護の状況

80歳以下で要介護者等の認定を受けている割合は26%に及びます。

親に配偶者等がいない場合、親の介護は子に降りかかってきます。

親が80歳以下の場合、その子供はまだまだ子育てや仕事に追われている年齢と言えるでしょう。

とても親の介護までは手が回らず、「メンタルやられた」「人生終わった」などのワードに繋がってくることがわかります。

親の介護は子に扶養義務がありますが、子がすべてやる必要ありません

要は親が大変な状況を放置せず、親が適切な支援を受けるための窓口(キーパーソン)に子がなれば良いということです。

介護におけるキーパーソンとは、親の介護サービス利用に関する意思決定や医療・介護関係者との連絡調整を行う中心人物のことを言います。

今回は、ケアマネジャー歴14年の私がこれまでの経験をもとに、親の介護に直面したとき、自分の生活を守るために、あなたの心にとめておいてほしいことをお伝えします。

  • 日常的な介護のうち、できないことは、介護のプロに任せる
  • 自分の役割を決めておく
  • 親の介護について気軽に相談できる人をつくる
  • 親の介護にかかる費用は親の年金と貯蓄でまかなう

日常的な介護のうち、できないことは介護のプロに任せる

日常的な介護とは、親が自宅で生活するための、必要最小限の介護を指しています。

  • 食事・排泄・入浴などの身体的な介護
  • 掃除・洗濯・調理・買い物・ゴミ出しなどの家事支援

これらのうち、親が1人でできないことは何でしょうか?

親が1人でできないことの中から、家族(子)が無理のない範囲で手伝えることはありますか?

遠距離に住んでいる家族(子)の場合は、日常的な介護を担うのは帰省したときぐらいしか不可能でしょう。

親も家族(子)も、できない日常的な介護については、介護のプロに任せるのが一番です。

居住地ある地域包括支援センターに相談し、介護保険の申請方法について尋ねてみましょう。

遠距離や忙しくて時間がない場合は、電話相談でも大丈夫です。

自分の役割を決めておく

家庭環境によって、親子関係はさまざまで複雑なものです。

親の介護が必要になったとき、それまでの関係性が影響して、「親の面倒なんてみたくない」と思う人もいるかもしれません。

親に認知機能の低下がある場合、ケアマネジャーは支援を開始するにあたり、介護サービス利用に関する意思決定や医療・介護関係者との連絡窓口であるキーパーソンが誰なのか?を必ず確認します。

子がどこまで親の介護に関わるかは、家庭によって違ってきます。

事例をあげてみます。

一人っ子で親が離婚し、離れて暮らしていた親に介護が必要になったケース。

子以外に身寄りがいないので、ケアマネジャーは子をキーパーソンとします。

子としては、親の連絡先は知っていたけど、ずっと離れて暮らしていたので、さほど思い入れもない。

今も離れたところに住んでいて、仕事も家庭もある。

子の意向は、「入院になったときの手続き」「親が亡くなったときの対応」は自分が行うが、それ以外はできない…でした。

ケアマネジャーは子の意向を受けて、それ以外の支援について、調整を行いました。

この例で示した「子」が「親」の家に来るのは年に1回あるかないかですが、それでも「親」の生活はきちんと成り立っています。

「入院になったときの手続き」「親が亡くなったときの対応」以外は、すべて任せます!などと、具体的に自分ができることをケアマネジャーに伝えておくことが大切です。

親の介護について気軽に相談できる人をつくる

兄弟姉妹がいる場合は、親の介護について子供同士で相談することができるでしょう。

一人っ子の場合や、兄弟姉妹がいても親の介護に対する考え方に温度差があると、一人で抱え込むことになるかもしれません。

不安や心配事、ときには親に対する怒りの気持ちなどは、吐き出さないと、どんどん追い詰められてしまいます。

すでに担当のケアマネジャーがいる場合には、ケアマネジャーがそういう存在であればよいと思います。

介護者が集まるコミュニティサイトなどで、吐き出すのも良いかもしれません。

知らない人の方が、案外、吐き出しやすいこともあるでしょう。

とにかく、親の介護でストレスを溜めないことが大切です。

親の介護にかかる費用は、親の年金や貯蓄・資産でまかなう

ここ最近は物価高が激しく、年金だけではやりくりできない高齢者が増えているのではないでしょうか。

高齢者の中には、子供にお金を残そうと、貯蓄や資産には手を付けず、なんとか年金だけでやりくりしようとされる方もいます。

介護保険サービスの利用を切り詰めて節約をした結果、余計に状態が悪くなり、子の負担が大きくなってしまうと本末転倒です。

親がある程度の年齢になったら、親の年金、貯蓄、資産を把握しておくのが良いでしょう。

親が貯めたお金は、親の健康や生活のために使ってほしいと思いませんか?

いくつになっても親が子を思う気持ちは変わりません。できるだけお金を残してあげたいという親の気持ちもわかります。

自分の生活を守るためにも、親のお金の状況について、一度は親子で話し合っておくことが大切です。

貯蓄も資産もない、年金も少ない…という親の場合、子育て世代の子にとっては非常に大きな問題となります。

経済的な扶養なんて、できるわけがありません。

このような場合は、自分の家族の生活や子供の教育費を優先するべきです。

親の生活が成り立たない場合には、生活保護の申請を視野に入れましょう。

まとめ

親の介護に直面したとき、自分の生活を守るために、あなたの心にとめておいてほしいことをお伝えしました。

  • 日常的な介護のうち、できないことは、介護のプロに任せる
    • 親の居住地にある地域包括支援センターに相談し、介護保険を申請する
  • 自分の役割を決めておく
    • 自分ができることをケアマネジャーに伝え、それ以外はお任せする
  • 親の介護について気軽に相談できる人をつくる
    • ケアマネジャーに相談
    • コミュニティサイトの活用
    • 親の介護でストレスを溜めないことが大切
  • 親の介護にかかる費用は親の年金と貯蓄でまかなう
    • 親がある程度の年齢になったら、親の年金、貯蓄、資産を把握する
    • 親のお金の状況について、一度は親子で話し合っておく
    • 親の年金が少なく貯蓄もない場合は、生活保護の申請を視野に入れる

法律上、子は親の扶養義務がありますが、すべて自分でやる必要はないのです。

あなたができないことは、誰かが支援してくれます。

その誰かの支援が整えば、自分の生活を守ることができるのです。

親の介護は突然やってきます。

そのときは、一人で抱え込まず、地域包括支援センターや私のような居宅介護支援事業所のケアマネジャーに相談してみてください。

この記事が少しでも、あなたのお役に立てばうれしいです。

ゆーり
ゆーり

ケアマネplusライターでは、子育てや仕事を頑張っているあなたを応援しています。

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