成年後見制度の申立てが必要な人に、ケアマネジャーができることを解説!

ケアマネジャーをしていると、認知症や知的障害、精神障害などにより、判断能力が不十分な人の支援を行うことがとても多いのではないかと思います。

頼れる家族がいればよいのですが、身寄りのない人、家族がいても関わりがない(関わることができない)など、さまざまです。

頼れる家族がいない場合、このような困りごとがでてくるのではないでしょうか。

  • 財産管理ができず、光熱費などの支払いが未払いになる
  • 自分が不利益になる契約を結んでしまう(悪徳商法による被害)
  • 自分にとって、必要なサービスの契約ができない

このような困りごとがでてきた時、都道府県・指定都市社会福祉協議会が実施している日常生活自立支援事業の利用や、成年後見制度の申立てが必要となってきます。

ケアマネジャーは成年後見制度の申立て自体を行うことはできません。

では、成年後見制度の申立てが必要な人に、ケアマネジャーができることは何か?について解説していきます。

参考:日常生活自立支援事業|厚生労働省

参考:成年後見はやわかり 成年後見制度|厚生労働省

成年後見制度の必要性を検討、整理して、まとめておく

まずは、成年後見制度の必要性を検討します。

一人で考えるのではなく、以下の人などに相談するのが良いでしょう。

  • 自分が所属している居宅介護支援事業所の主任ケアマネジャー
  • 管轄の地域包括支援センター

なかには、成年後見制度でなくても、日常生活自立支援事業の利用で十分な人もいるかもしれません。

日常生活自立支援事業の契約の内容について判断し得る能力がある人の場合、成年後見制度に比べて、日常生活自立支援事業の方が圧倒的に出費を抑えることができます。

日常生活自立支援事業と成年後見制度の比較を以下の表に示します。

(※1)成年後見にかかる申立て費用はこちら。申立てを弁護士や司法書士に依頼する場合は追加で10万円~30万円程度の費用がかかります。

何に困っていて、どんな支援が必要なのか?

成年後見制度の申立てが必要な理由について、整理してまとめてみましょう。

参考:申立てにかかる費用・後見人等の報酬について 東京家庭裁判所後見センター|裁判所

利用者(家族)に成年後見制度の利用について、説明して理解を得る 

まったく意思疎通できない人は別として、ケアマネジャーが利用者にわかりやすく成年後見制度についての説明をすることは、とても大切なことです。

普段から接しているケアマネジャーであれば、こういう言い方をすれば伝わりやすいなど、その人への最善な伝え方がわかっているでしょう。

  • 電気やガスが止まらないように、お金の管理を手伝ってもらいませんか?
  • 詐欺にあったときに、あなたの財産を守ってくれる人を作りませんか?
  • 施設に入ることになったとき、契約のお手伝いをしてくれる人を探しましょう

成年後見制度の必要性について、自分で整理してまとめたものを参考にしながら、より相手に伝わる言葉で利用者(家族)の意思確認を行いましょう。

なかには、必要性があるにも関わらず、「自分は大丈夫だから」と、申立てを拒否する人もいるでしょう。

管轄の地域包括支援センターや利用しているサービス事業者などと協力しながら、利用者の理解が得られるよう努力してみましょう。

申立て人は誰?

法律上、成年後見の申立てができるのは、本人、配偶者、4親等以内の親族、検察官、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人、市町村長などに限られています。

本人(家族)が成年後見制度の申立てに同意されたら、申立て人について、相談しておきましょう。

相談窓口を活用して、申立て支援をしてくれる専門家に繋ぐ

厚生労働省のHPにある、お近くの権利擁護相談窓口検索を活用すると、成年後見支援センターなどの連絡先を知ることができます。

地域包括支援センターや周りのケアマネジャーと繋がりがある、弁護士や司法書士などに相談するのも良いでしょう。

申立てに必要な書類の準備は、本人や家族でもできますが、なかなかハードルが高いものです。

専門家に相談して繋ぐことが一番よい方法だと思います。

参考:成年後見はやわかり 相談窓口|厚生労働省

本人情報シートの作成

成年後見制度を申立てには、鑑定の要否を判断するために医師の診断書が必要となります。

利用者のなかには医師の前では、「大丈夫です!」「困ってません!」などと、しっかり答える人もいるでしょう。

医師が普段の生活状況まで、細かく把握できていないのは当然のことです。

そこで、本人の生活を支える福祉関係者などが、本人の生活状況などについての客観的な情報を医師に伝えるために、本人情報シートが用いられるようになりました。

本人情報作成シートについてはこちらからダウンロード!

本人情報シートは申立ての際、家庭裁判所にも提出が必要となりますので、必要性について自分でまとめた資料を参考に作成しましょう。

参考:申立てに必要な書類(成年後見)|裁判所

診断書を作成してもらう医師の確認

診断書を作成してもらう医師について、法的な制限はありません。

本人の状態をよく知る主治医が良いでしょう。精神科や心療内科、脳神経内科の医師であれば、尚良いと思います。

医師に、ケアマネジャーが作成した本人情報シートを参考にしてもらいながら、診断書を作ってもらいましょう。

診察時にケアマネジャーが同行できれば、一番良いですね。

家庭裁判所に鑑定が必要と判断された場合は、10万円~20万円程度の費用がかかってしまうので、医師にしっかりと本人の状態を伝えることが大切です。

成年後見人等候補者と打ち合わせ

本人情報シートの作成、医師の診断書が作成できれば、弁護士や司法書士などの専門家が必要な書類を揃え、家庭裁判所に提出します。

ケアマネジャーが関わる成年後見制度の支援においては、成年後見人等になられるのは、弁護士・司法書士・社会福祉士が多いのではないかと思います。

成年後見人が選任されるまでは数か月かかるので、その間に成年後見人等候補者と、ざっくりと打ち合わせをしておくことも大切です。

審判後、審判書が届いたかどうかの確認方法

審判書は申立人、本人、成年後見人等に書面で届きます。

審判書が届いてから2週間以内に不服申し立てがされない場合、成年後見等開始審判の法的な効力が確定します。

特に申立人が本人の場合、書面は郵便で届くので、受け取れない、届いたかどうか忘れてしまう、無くすなどの恐れがある人は注意が必要です。

選任された成年後見人等に審判書が届いたタイミングで、ケアマネジャーが利用者に確認。

届いていることが確認できたらケアマネジャーが成年後見人等に連絡する…など、事前に成年後見人等と打ち合わせをしておくとスムーズです。

成年後見人等がサービス事業者など関係者との顔合わせを希望するか?

成年後見人等が選任後にサービス事業者など関係者との顔合わせを希望する場合、事前にサービス事業者にも伝えておくとよいです。

サービス事業者にとっても、買い物支援時のお金の取り扱い方・サービス利用料の支払い方法など、成年後見人等に確認したいことがあるでしょう。

ケアマネジャーとしては、成年後見人等が決定したタイミングで、サービス担当者会議を調整するのがベストです。

成年後見人等にもサービス担当者会議に出席してもらうようにしましょう。

成年後見人等との連携の仕方を確認

成年後見人等の実務開始後、成年後見人等が具体的に何を支援してくれるのかを確認しておきます。

補助・補佐・成年後見によっても異なりますので、具体的な支援の内容を聞いておきましょう。

今後サービス担当者会議の案内が必要か?居宅サービス計画書などの署名は本人で良いか?など、成年後見人等への確認も必要です。

とりあえず、成年後見人等が実務を行えるようになれば、ケアマネジャーとしては安心です。

成年後見人等としっかりと連携を図り、利用者さんの権利を守っていきましょう。

まとめ

成年後見制度の申立てが必要な人に、ケアマネジャーができることを解説しました。

  1. 成年後見制度の必要性を検討、整理して、まとめておく
  2. 利用者(家族)に成年後見制度の利用について、説明して理解を得る
  3. 相談窓口を活用して、申立て支援をしてくれる専門家に繋ぐ
  4. 本人情報シートの作成
  5. 診断書を作成してもらう医師の確認
  6. 成年後見人等候補者と打ち合わせ
    • 審判後、審判書が届いたかどうかの確認方法
    • 成年後見人等がサービス事業者など関係者との顔合わせを希望するか?
  7. 成年後見人等との連携の仕方を確認

成年後見制度は申立てをしてから、実際に成年後見人等が実務を行えるようになるまでの期間は長く、費用もそれなりにかかります。

ケアマネジャーを14年やっている私でも、最初の申立てから関わったケースは5人程度で、ハードルの高さを感じています。

本当は成年後見制度が適切だけど、日常生活自立支援事業にせざるを得ないケースもありました。

ただ、ケアマネジャーとしてできることは、利用者の権利擁護のために、これからも頑張って支援をしていきたいと思います。

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