
私は居宅介護支援事業所で14年間ケアマネジャーをしています。
これまで、さまざまな理由から「そろそろ施設を考えたい」というご家族の相談をたくさん受けてきました。
ケアマネジャーの事務所には介護サービス事業所や施設の方がたくさん営業に来られますが、その中でもここ2~3年で圧倒的に増えたのは、老人ホーム紹介センターの営業です。
この老人ホーム紹介センターは私がケアマネジャーになった当時からあるサービスですが、この事業に参入する会社が急増しているのです。
【参入する会社が急増=儲かる事業】ということなのだと思います。
各社「公平・中立な立場で紹介します」と謳って営業されていますが、実際の中身はケアマネジャーの私でもわからないところです。
老人ホーム紹介センターはご利用者やご家族にとって、たしかにメリットもあるサービスですが、利用するときには、多少の知識を持って利用することをお勧めします。
上手に利用すれば、時間や手間が省けて、希望通りの施設が見つかるかもしれません。
そこで今回は老人ホーム紹介センターを利用するときのメリットやデメリットについて解説し、【私、ケアマネジャーが考える】施設を選ぶ時のお勧め手順についてもご紹介します。
老人ホーム紹介センターのメリット
施設見学の日程調整、見学時の送迎や付き添いをしてくれる
1日で数件の施設を見学したいと思っても、日程調整や場所の確認など、意外と手間がかかるものです。
老人ホーム紹介センターでは、都合の良い日を伝えておけば、その手間なことを全部やってくれます。
ほとんどの老人ホーム紹介センターが自社の車で送迎してくれますし、施設内の見学にも付き添ってくれます。
自家用車を持っていない方や、初めての施設見学で何を質問したら良いのかわからないという方は老人ホーム紹介センターを利用するのが良いかもしれません。
しかも、すべて無料でやってくれます。
老人ホーム紹介センターのデメリット
紹介手数料が高い施設を熱心に勧めてくる
そもそも老人ホーム紹介センターの利益は、入居に繋がったときに施設が払う紹介手数料です。
老人ホーム紹介センターと施設が契約を結ぶ際、紹介手数料についても、施設ごとに取り決められています。
紹介手数料が高い施設を紹介する方が会社としては利益が出ますよね。
老人ホーム紹介センターが勧めてくる施設は、主に介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅が多いのではないかと思います。
ただし、すべての施設が老人ホーム紹介センターと契約しているわけではありません。

老人ホーム紹介センターが契約をしていない施設は紹介してもらえないのですか?

いいえ、紹介してもらえます。

契約をしていない施設の場合、老人ホーム紹介センターがその施設に連絡をして「貴施設の見学を希望されている方がいます。この方が入所に繋がった場合、紹介手数料は不要ですが、今後は契約を結んでもらえないでしょうか…」
老人ホーム紹介センターにとって、顧客獲得のメリットがあるのです。
気に入った施設はないけど、断りにくくなって決めてしまう
利用者さんにとっては、いっさいお金の負担がない老人ホーム紹介センター。
たくさん相談にのってもらったり、施設見学に付き添ってもらううちに、「こんなに親身になってやってくれたんだから」と特に気に入った施設はないけど、紹介された中から選んでしまう方もいるかもしれません。
ケアマネジャーがお勧めする、施設選びの手順

老人ホームのデメリットを聞くと不信感を抱く方も多いと思います。
私も実際に老人ホーム紹介センターの営業マンに「紹介料が高いところばかり紹介してるんじゃないですか?」と意地悪な質問をしたことがあります。(営業マンの方、ごめんなさい)
その営業マンは「上の者しか紹介料は知りません。僕たちは公平中立に紹介するために紹介料は知らされていないんです」と言っておられました。
真偽のほどはわかりませんが、利用者さんやご家族がある程度の知識をもって利用するのであれば、デメリットはありません。
どのように利用すればよいのか、私がお勧めする施設選びの手順を紹介します。
施設の種類や違いについては、ケアマネジャーや地域包括支援センターに聞く
高齢者が入所できる施設といっても、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホーム…など、たくさんの種類があります。
まずはこれらについて、ケアマネジャーや地域包括支援センターで説明を聞きましょう。
地域のどこにどんな施設があるのかについても質問してみるのが良いと思います。
施設の情報をインターネットで検索する
施設の種類がわかったら、インターネットで検索してみます。
例えば「介護保険施設」で検索すると、近隣にある施設の場所や「みんなの介護」や「LIFULL介護」などが出てくると思います。
どこにどんな施設があるのか、施設のホームページを見たり、インターネットや電話などで資料を請求してみましょう。
施設に見学に行く
直接施設に電話をかけて「施設見学がしたいのですが…」と聞いてみましょう。
ここで電話の対応が悪い場合は、その時点で他の施設を考えた方が良いかもしれません。
老人ホーム紹介センターを利用した場合、このやり取りは老人ホーム紹介センターが行うので、わからないですよね。
実際に入所すると、施設と家族で連絡を取り合う機会も多くなります。
折り返しの連絡がない…などは最悪だと思います。
個人で不安な場合は、ここで老人ホーム紹介センターを(2か所)利用する
ケアマネジャーや地域包括支援センターからの情報、インターネットからの情報を得たうえで、個人で不安な場合は老人ホーム紹介センターを利用してみましょう。
ただし、先に書いたデメリットを理解して利用してください。
実際に自分で調べた情報の中から、具体的に希望を伝えることをお勧めします。
- 「グループホームを探しています」
- 「〇〇ホームに見学に行きたい」
- 「施設費用は月〇円までに抑えたい」
- 「入居一時金がない施設はありますか?」
複数の老人ホーム紹介センターを利用するのも良いと思います。
多くなりすぎると訳が分からなくなってしまうので、2か所程度が良いのではないでしょうか。
それぞれの老人ホーム紹介センターには「もう1か所、紹介センターを利用しています」と、さらっと伝えておきましょう。

気に入った施設がない場合、紹介を断っても良いですか?

もちろんです。
「今回は良いところがなかったので見合わせます」
「別の紹介センターで気に入った施設を紹介してくれたので、そちらにします」など、伝えれば大丈夫です。
親身に相談にのってくれたり、施設見学に付き添ってくれた場合などは、感謝の言葉「ありがとうございました」と老人ホーム紹介センターの担当者に伝えておきましょう。
施設見学に行った時に確認すること
施設見学に行く前に、確認したいことをまとめてから行くようにしましょう。
入所してから「思っていたのと違う」と後悔しないように、細かいことまで確認しておくのが良いです。
- 家族が通いやすい場所にあるか?面会できる日、面会の時間
入所後、面会や物品の差し入れ、体調不良の場合など、家族が施設に行く機会も多いと思います。 - 相談員、介護スタッフの対応に問題はないか?
相談員は話しやすい雰囲気の人か、すれ違う介護スタッフが挨拶をしてくれるか、スタッフの表情を観察しましょう。疲れている顔のスタッフばかりだと心配です。 - 費用!これ一番大事
介護保険の費用、食事代や部屋代、その他も実費で請求されるものがあります。
「トータルでいくらですか?」と確認しましょう。 - 退所するときの確認
特に入居一時金などが必要な施設の場合には、退所時の返金について確認しておくことをお勧めします。 - 個人のこだわりの部分について、対応してもらえるか
例えば、「朝は絶対ご飯じゃないとダメなんです」「自分の部屋で趣味のウクレレを練習したい」「お風呂は寝る前に入らないと眠れないんです」など。
対応してもらえるかどうかは別として、とりあえず、少しのこだわりでも全部聞いておく方が良いと思います。
まとめ

近年、異常に増えている老人ホーム紹介センターのメリット、デメリットをまとめ、ケアマネジャーである私が最適と思う施設選びの手順について紹介しました。
【メリット】
・施設見学の日程調整、送迎や付き添いをしてくれる。
【デメリット】
・紹介手数料が高い施設を熱心に勧めてくる。
・気に入った施設はないけど、断りにくくなって決めてしまう。
【現役ケアマネジャーがお勧めする施設選びの手順】
①施設の種類や違いについては、ケアマネジャーに聞く。
②施設の情報をインターネットで検索する。
③施設に見学に行く。
④施設見学が個人で不安な場合は、ここで老人ホーム紹介センターを(2か所程度)利用する。
⑤見学に行った時に確認すること。
・施設のアクセス
・スタッフの対応や表情
・費用(月にかかるトータルの金額)
・退所時の返金
・個別の対応
正直、ケアマネジャーでも老人ホーム紹介センターや施設の中身までは、十分把握できていないことが多いのが現状です。
担当者が親切で感じの良い人だったとしても、実際に働く介護スタッフも同じとは限りません。
- わからないことは聞く。
- 要望はきちんと伝える。
- 納得できない場合は丁寧に断る。
- お世話になった場合は「ありがとうございました」と感謝の言葉を伝える。
施設を選ぶとき、担当者としっかりコミュニケーションをとり、施設に入所後も介護スタッフとしっかりコミュニケーションをとる。
これが一番大切ですね。

ケアマネplusライターでは親の介護と自分の生活を大切にする、あなたを応援しています。
これからも皆さんに役立つ情報を発信していきますので、是非、またブログをのぞいてみてくださいね。