自宅で介護を続けてきたけれど、「そろそろ限界かも…施設を考えたい」と悩んでいるご家族、多いのではないでしょうか。
私は居宅介護支援事業所で管理者をしている主任ケアマネジャーです。
ケアマネジャーの事務所には介護サービス事業所や施設の方がたくさん営業に来られます。
その中でもこの2~3年で圧倒的に増えたのが、老人ホーム紹介センターの営業。
たくさんの企業が老人ホームの紹介事業に参入しているのです。
過去に私も利用者のご家族に、この老人ホーム紹介センターを紹介し、実際に施設入所された方もいます。
しかし、この増え続ける老人ホーム紹介センターを利用する場合、多少の知識を持っておくことが大切なのです。
老人ホーム紹介センターはご利用者やご家族にとって、たしかにメリットのあるサービスですが、注意しなければならないこともあります。
上手に利用すれば、時間や手間が省けて、希望通りの施設が見つかるかもしれません。
そこで今回は、老人ホーム紹介センターを利用するときのメリットやデメリットについて解説し、【ケアマネジャーが考える】施設を選ぶ時のお勧め手順についてもご紹介したいと思います。
老人ホーム紹介センターのメリット
施設見学の日程調整、見学時の送迎や付き添いをしてくれる
1日で数件の施設を見学したいと思っても、日程調整や場所の確認など、意外と手間がかかるものです。
老人ホーム紹介センターでは、都合の良い日を伝えておけば、その手間なことを全部やってくれます。
ほとんどの老人ホーム紹介センターが自社の車で送迎してくれますし、施設内の見学にも付き添ってくれます。
自家用車を持っていない方や、初めての施設見学で何を質問したら良いのかわからないという方は老人ホーム紹介センターを利用するのが良いかもしれません。
しかも、すべて無料でやってくれます。
老人ホーム紹介センターのデメリット

費用が高い施設を勧められる可能性がある
老人ホーム紹介センターの利益は、入所に繋がったときに施設側が払う紹介手数料です。
老人ホーム紹介センターと施設が契約を結ぶ際、紹介手数料についても、施設ごとに取り決められています。
施設が負担する紹介手数料が高い施設に繋ぐ方が老人ホーム紹介センターとしては利益が上がります。
老人ホーム紹介センターが勧めてくる施設は、主に介護付き有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅が多いのではないかと思います。
介護付き有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅は地域や施設のグレードによっては、費用がかなり高くなるところもあります。
最初に毎月捻出できる施設費用を老人ホーム紹介センターに伝え、その範囲内で施設を紹介してもらうのがよいです。
その他の注意点として、すべての施設が老人ホーム紹介センターと契約しているわけではないということを理解しておきましょう。

優先して紹介されるのは老人ホーム紹介センターが契約を結んでいる施設になります。



老人ホーム紹介センターが契約をしていない施設は紹介してもらえないの?



契約の有無に関わらず、気になる施設があれば施設名を伝えれば紹介してもらえます。



利用者側もある程度、施設の知識や情報を得ておくほうがよいということですね。



特に施設費用に不安のある方は紹介される施設だけではなく、自分でも施設の下調べをしておくほうがよいでしょう。
気に入った施設はないけど、断りにくくなって決めてしまう
利用者さんにとっては、いっさいお金の負担がない老人ホーム紹介センター。
たくさん相談にのってもらったり、施設見学に付き添ってもらううちに、「こんなに親身になってやってくれたんだから」と特に気に入った施設はないけど、紹介された中から選んでしまう方もいるかもしれません。
でもちょっと待ってください!
入居してから「費用が高すぎて住み続けられない」なんてことになると大変です。
高齢者にとって、住まいなどの生活環境が変わるということは、精神面での大きな負担になります。
施設を転々とすることがないよう、施設選びは慎重に行いましょう。
ケアマネジャーがお勧めする、施設選びの手順


老人ホーム紹介センターのデメリットを聞くと、利用するのを躊躇される方もいるかもしれません。
私も実際に老人ホーム紹介センターの営業マンに「施設が負担する紹介手数料が高いところばかり紹介してるんじゃないですか?」と意地悪な質問をしたことがあります。(営業マンの方、ごめんなさい)
その営業マンは「上の者しか紹介手数料は知りません。僕たちは公平中立に紹介するために紹介手数料は知らされていないんです」と言っておられました。
真偽のほどはわかりませんが、利用者さんやご家族がある程度の知識をもって老人ホーム紹介センターを利用するのであれば、デメリットはありません。
上手に利用すれば、施設を探す時間や手間が省け、希望通りの施設を見つけることもできるでしょう。
では、どのように利用すればよいのか。
ケアマネジャーである私がお勧めする施設選びの手順を紹介します。
施設の種類や違いについては、ケアマネジャーや地域包括支援センターに聞く
高齢者が入所できる施設といっても、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、グループホーム…など、たくさんの種類があります。
まずはこれらについて、ケアマネジャーや地域包括支援センターで説明を聞きましょう。
地域のどこにどんな施設があるのかについても質問してみるのがよいと思います。
施設の情報をインターネットで検索する
施設の種類がわかったら、インターネットで検索してみます。
例えば「介護保険施設」で検索すると、近隣にある施設の場所や「みんなの介護」や「LIFULL介護」などが出てくると思います。
どこにどんな施設があるのか、施設のホームページを見たり、インターネットや電話などで資料を請求してみましょう。
施設に見学に行く
直接施設に電話をかけて「施設見学できますか?」と聞いてみましょう。
ここで電話の対応が悪い場合は、その時点で他の施設を考えた方がよいかもしれません。
老人ホーム紹介センターを利用した場合、このやり取りは老人ホーム紹介センターが行うので、わからないですよね。
実際に入所すると、施設と家族で連絡を取り合う機会も多くなります。
折り返しの連絡がない…などは最悪だと思います。
個人で不安な場合は、ここで老人ホーム紹介センターを利用する
ケアマネジャーや地域包括支援センターからの情報、インターネットからの情報を得たうえで、個人で不安な場合は老人ホーム紹介センターを利用してみましょう。
ただし、先に書いたメリット・デメリットを理解して利用してください。
実際に自分で調べた情報の中から、具体的に希望を伝えることをお勧めします。
- 「グループホームを探しています」
- 「〇〇ホームに見学に行きたい」
- 「施設費用は月〇円までに抑えたい」
- 「入居一時金がない施設はありますか?」
複数の老人ホーム紹介センターを利用するのもよいと思います。
多くなりすぎると訳がわからなくなってしまうので、2か所程度がよいです。
それぞれの老人ホーム紹介センターには「もう1か所、紹介センターを利用しています」と、さらっと伝えておきましょう。



気に入った施設がない場合は断ってもいいの?



もちろんです。「今回は良いところがなかったので見合わせます」と断ればよいです。親身に相談にのってくれた場合などは「ありがとうございました」と感謝の言葉を伝えておきましょう。
施設見学に行った時に確認すること
施設見学に行く前に、確認したいことをまとめてから行くようにしましょう。
入所してから「思っていたのと違う」と後悔しないように、細かいことまで確認しておくのがよいです。
- 家族が通いやすい場所にあるか?面会できる日や面会時間など
- 相談員・介護スタッフの対応に問題はないか
- トータルでかかる費用(介護保険自己負担・食事代・部屋代・その他実費で請求されるもの)
- 退所時の確認(入居一時金を支払う場合、返金があるかどうか)
- 個人のこだわりへの対応(食事・入浴・外出など)
入所後、物品の差し入れなどで家族が施設に行く機会もあると思います。
交通の便がよいかどうか、自家用車で行く場合は駐車場があるかどうかも確認しておくのがよいですね。
見学に対応してくれる相談員は話しやすい雰囲気の人か、すれ違う介護スタッフが挨拶をしてくれるか、スタッフの表情なども観察しましょう。
疲れている顔をしているスタッフが多いと心配です。
施設費用は一番気になるところだと思います。
ざっくりでよいので月にかかるトータルの費用を確認しましょう。
入居一時金が必要な施設の場合は、退所時に返金がどのくらいあるのかも確認しておくとよいです。
個人のこだわりについては、対応してもらえるかどうかは別として、思いつくものはすべて聞いておくようにしましょう。
- 「朝ご飯は毎日パンがいい
- 「お風呂は毎日入りたい」
- 「1人で外出できますか?」
- 「お部屋に愛着のある家具を持ち込みたい」
まとめ


近年、異常に増えている老人ホーム紹介センターのメリット、デメリットをまとめ、ケアマネジャーである私が最適と思う施設選びの手順について紹介しました。
老人ホーム紹介センターを利用する場合、メリット・デメリットを理解しておくことが大切です。
- 施設見学の日程調整をしてくれる
- 施設見学の送迎や付き添いをしてくれる
- 費用が高い施設を勧められる可能性がある
- 利用者側もある程度、施設の知識や情報を得ておく必要がある
- 気に入った施設はないけど、断りにくくなって決めてしまう
- 施設の種類や違いについては、ケアマネジャーや地域包括支援センターに聞く
- 施設の情報をインターネットで検索する
- 施設に見学に行く
- 個人で不安な場合は、ここで老人ホーム紹介センターを利用する
- 確認したいことをまとめてから行く
自分に合った施設・理想の施設を見つけるには、ご自身でもある程度、施設の種類や情報得ておくことをお勧めします。
その上で施設見学に行くときに個人で不安な場合は、老人ホーム紹介センターを上手に活用しましょう。
自宅で介護を続けてきたけれど、「そろそろ限界かも…施設を考えたい」と悩んでいるご家族へ、この記事が少しでも参考になればうれしいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。



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