介護報酬改定により、令和6年度から居宅介護支援事業所においても「感染症対策の研修・訓練」が義務化されました。参考資料:介護保険法施行規則第140条の63の6 第1号に規定する厚生労働大臣が定める 基準について
- 「具体的にどんな訓練をすればいいんだろう…」
- 「忙しいのに、訓練のシナリオなんて考える時間がない」
- 「構成が上手く作れない」
このように、頭を悩ませているケアマネさんは多いのではないでしょうか。
「年度末も近づいてきているし、今年度はどうしようかな…」と、私も悩んでいました。
連絡や調整業務がメインの居宅ケアマネには、実働訓練よりも机上訓練の方が有効性があり、行いやすいですよね。
でも訓練のシナリオは?去年とは違うものにしたい…
そこで、AIツール「Copilot」を使い、居宅介護支援事業所に特化した、「感染症対策・机上訓練」の企画から構成・シナリオまでを実際に作ってみました。
制作時間はたったの10分。
AIを使えば、現場に即したリアルなシナリオやフローチャートまで、簡単に作ることができます。
この記事では、私の実践を紹介しながら、「AIを使って、感染症対策・机上訓練をゼロから作る方法」をまとめています。
「訓練の質を高めたい」「準備の負担をなくしたい」と思っているケアマネさん、
ケアマネ業務にAIを活用してみたいというケアマネさんは、是非、この記事を最後まで読んでみてください。
よいプロンプトを作るコツ
机上訓練に限らず、AIに指示を出すときには、以下の4つを押さえておくと、回答の精度が一気にあがります。
- 「あなたは○○です」と、AIの役割を設定する
- 作らせたい成果物の「目的」を明記する
- 例「居宅介護支援事業所で行う感染症対策、机上訓練のシナリオを…」
- 条件を具体的に(対象者・訓練時間・難易度)
- 例「参加者はケアマネジャー7名・1時間で行える訓練・新人ケアマネでもわかりやすく…」
- 出力形式を指定する
- 例「順を追って箇条書きで」「表形式で」
【AI・手順①】シナリオのアイデア出し
プロンプトを作るコツが理解できたら、さっそく、AIツールを使っていきましょう。
今回私はCopilotを使いましたが、あなたが使いやすいAIツール(ChatGPT・Geminiなど)で大丈夫です。
あなたは居宅介護支援事業所の主任ケアマネジャーです。
感染症対策で机上訓練を行うときの、具体的なシナリオを5つ、箇条書きで提案してください。
参加者は事業所のケアマネジャー7名、新人ケアマネにもわかりやすい初級編、研修時間は1時間です。
AIが提案してくれたシナリオのアイデアから、最適なものを選びます。
筆者私の実践では、Copilotから提案された5つのシナリオから、こちらを選んでみました。
実践例:感染症発症時の情報共有と訓練記録
| シナリオ例 | 利用者宅でノロウイルスが発生、関係者への情報共有が必要 |
| 訓練内容 | 連絡フローの確認(誰に・何を・いつ伝えるか)、記録の正確性とタイムライン作成 プライバシー配慮のポイント |
| 目的 | 迅速かつ適切な情報伝達力の向上 |
【AI・手順②】ワークシートとタイムラインの作成
次はあなたが選んだシナリオから、AIにワークシートと詳細タイムラインを作ってもらいましょう。
(先ほど選んだ)シナリオAのワークシートと詳細タイムラインを作ってください。
ワークシート
私の実践では、想定する利用者の初期情報・ワークシート①(最初に行うべきこと)・ワークシート②(連絡先の整理)・ワークシート③(情報共有の要点)・ワークシート④(二次感染防止のポイント)をAIが作ってくれました。
実践例:ワークシート②(連絡先の整理)
| 関係機関・関係者 | 必要 | 不要 | 連絡内容(要点) |
|---|---|---|---|
| 主治医 | ☐ | ☐ | |
| 家族 | ☐ | ☐ | |
| 訪問介護管理者 | ☐ | ☐ | |
| 訪問看護 | ☐ | ☐ | |
| 配食サービス | ☐ | ☐ | |
| 事業所内(管理者) | ☐ | ☐ | |
| 保健所(必要時) | ☐ | ☐ |



見落としがちな「配食サービス」まで入っていたので、感心しました。
利用者によって、連絡先は異なってくると思いますが、「関係機関・関係者」可能性のあるすべてを表に入れ込んでおけば、抜け漏れがなくてよいと思います。
訓練のディスカッションの時間に、皆でこの表をブラッシュアップしていくのもよいですね。



私は、「在宅薬局」なんかも入れておくといいな…と思いました。
詳細タイムライン
詳細なタイムラインは、こんな感じにAIが作ってくれました。
実践例:詳細タイムライン
| 0–5分 | 導入(目的・注意点) |
| 5–10分 | シナリオ配布(情報のみ)読み合わせ |
| 10–25分 | 個人ワーク(ワークシート記入) |
| 25–50分 | ディスカッション |
| 50–60分 | ファシリテーター講評(解説)・まとめ |
限られた時間の中で行う訓練。



このようにしっかりとしたタイムラインがあると、効率よく訓練ができますね。
【AI・手順③】ファシリテーター用の進行台本
シナリオや構成・ワークシート・タイムラインは、これで完璧です。
ついでに、ファシリテーター用の台本もAIに作ってもらいましょう。
タイムラインに沿って、ファシリテーター用の進行台本を作ってください。
タイムラインごとに、ファシリテーターのセリフをAIが考えてくれます。



私の実践では、セリフが短文だったり、箇条書きになっている部分もありました。
実践例:箇条書きの部分
- ノロウイルスの感染力と二次感染防止の重要性
- 嘔吐物処理に関する注意点(漂白剤使用、飛散範囲の処理など)
- 事業所横断の情報共有の必然性
- PPE適正使用の再確認
- サービス継続の可否判断の基準
これをまとめて解説できるように、追加でAIに指示を出します。
「話す内容のポイント」5つを、参加者にわかりやすく説明するために2000~3000文字でまとめてください。



このプロンプトにより、感染症対策・机上訓練の背景説明として、ひとつの連続した文章にまとめることができました。
わかりにくいところは、追加でAIに指示を出すようにしましょう。
これで、ファシリテーターとしての、進行と解説・まとめまでの台本が完成です。
書類や資料の準備
あとは、机上訓練で必要となるものを準備しておきましょう。
- 訓練の次第(日時や参加者、タイムラインなど)
- 訓練で使うワークシート
- 解説資料
- 進行用の手元資料
居宅内だけで行うミニ訓練や、準備の時間があまりとれない場合は、AIの回答をWordなどにコピペするのでもよいと思います。
他の居宅と合同で…など、規模が大きい場合には、しっかりとした資料を準備するのがよいですね。
資料作成は、こちらの記事を参考にしてみてください。
Canvaというデザインツールを使えば、簡単に資料作成ができます。
まとめ:AI活用で「質の高い訓練」と「未来のキャリア」を掴む


今回の記事では、主任ケアマネである私の実践例を紹介しながら、居宅介護支援事業所向けの感染症対策・机上訓練の企画から構成・シナリオを作る方法について解説しました。
CopilotというAIを活用し、制作時間はわずか10分です。
AIを「優秀なアシスタント」として活用することで、時間のかかる訓練の企画・構成・シナリオ作成が劇的に時短できます。
この時短によって生まれた時間は、利用者さんとの面談・個別ケースの対応など、ケアマネにしかできない本来業務にあてることが可能です。
そして、この「AIを使いこなすスキル」は、単なる業務効率化に留まりません。
AIを当たり前に使う能力は、これからの時代、とても市場価値の高いスキルとなります。
ケアマネとしての専門性と、このAIスキルが掛け合わされることで、新たなキャリアの選択肢と収入源を生み出す強力なスキルアップに繋がります。
是非、今回の訓練シナリオでAIに触れ、AIをあなたの「頼れる相棒」として積極的に活用してみてくださいね。

